Glenn Gould Plays Sibelius

Glenn Gould Plays Sibelius

Glenn Gould Plays Sibelius

 

シベリウスのピアノ作品といえば「樹の組曲 op.75」の第5曲「樅の木」が飛び抜けて有名で、

あとはキャッチーな小品がちょこちょこ演奏される程度だ。

しかしグールドはシベリウスの録音に際し、3つのソナチネop.67という、地味で、ほとんど知られていない作品を選出した。

(キュリッキop.41はまだマシだが)

 

交響曲第4番は作品番号63。つまりこの3つのソナチネも、病で自らの死を強く意識するようになった頃の作品だ。

とはいえ交響曲第4番のような絶望的な音楽とは一味違い、人間味をほとんど感じさせない

幽玄の世界を描き出している。

埃の匂いが漂う木造りの部屋にじわりと沁み入るような音楽だ。

 

一方のキュリッキでいうと、交響曲第2番がop.43であるし題材が叙事詩なので、比較的ストレートに胸に響く。

音楽的にはこちらの方が充実しているといえると思う。

 

 

またグールドは、複数の録音マイクをピアノからの距離を違えて配置した上で、

演奏箇所によって、異なるマイクで録音された音を再生するという実験を試みている。

ただでさえ人間味が薄い音楽が、これによって更に感情から遠ざかるような効果をもたらす。